サンフランシスコ事務所 仲谷隆造 (PDF File)

1. はじめに

Eataly「Italy is Eataly:イタリアはEat(食べる)alyだ」イタリア・トリノで創業した産地直送の高級フードマーケット「Eataly」が、ニューヨーク・マンハッタンの大型店舗の正面に掲げる巨大なサイン。イタリア全土で展開後、海外進出は2008年から東京に4店舗を開店、昨年9月にアメリカ進出を果たした。食の健康ブームとともに、品揃えの豊富さ、そして何よりも店舗のセンスの良さから「クール」だと受け止められ、ニューヨークでは人気を博している。

アメリカでは健康的な食への関心が高まっており、景気回復を待ちつつ外食産業にも復調の兆しがあるようだ。特に日本食に関しては、Sushi(寿司)やRamen(ラーメン)が人気で、店舗の前に長蛇の列が出来ることは珍しく無い。サンフランシスコベイエリアにも日本食レストランが増える傾向にある。ところがその担い手は韓国系の経営も多く、日本人はビジネスチャンスを十分に活かしきれていないようだ。

福岡に来たことがある人なら「福岡は食べ物が美味しいところ」と、口を揃えて誰もが言う。しかし、アメリカ参入は日本からの競争相手が多い上に、様々なハードルが待ち構えている。例えば多民族社会のどのコミュニティを狙うのかなど。課題の一つは日本人が不得意とするマーケティングである。例えば、“Italy is Eataly”ならぬ“Fukuoka is Foodsoka”はどうか。個々の食品毎に参入を図るだけでなく、福岡の食事や料理全体を提案していくことが必要ではないか。高品質な福岡の食を、アメリカを経由して世界に認知させるチャンスが到来している。

2.ヘルシーフードの需要

Let’s Move(1)拡大する市場
全米96万店舗のレストランの売上は米国GDPの4%を占め、労働力の10%を雇用している。全米レストラン協会の2011年予測によれば、今年のレストラン産業はここ3年間の低迷期を乗り越え過去最高の6,040億ドル規模に達する見通しである。2年前との比較において、7割の消費者はより健康的なものを外食時に食べようとし、また3分の2のレストラン経営者も顧客が健康的な食べ物を注文すると言う。アメリカのヘルシーフードの市場は大きいだけでなく、今後の市場拡大が期待されている。

(2)子供の肥満対策
過去30年に子供の肥満率が3倍になってしまったアメリカ。子供のおよそ3人に1人は肥満または太り過ぎである。2000年以降に生まれた子供の3分の1は一生のうちに糖尿病にかかるといわれ、高血圧や心臓発作も懸念されている。原因は、ファストフードやお菓子の食べ過ぎ、テレビゲームの普及など、生活環境の変化によるものが大きい。ミシェル・オバマ大統領夫人のLet’s Moveキャンペーンは子供の肥満を解消するため、健康的な食事や体を動かすことを推奨している。食事については、毎日5品目の果物または野菜、低脂肪または無脂肪の乳製品、揚げ物より焼き物、バターの代わりに植物性油など、具体的に細かく食の改善を提案している。

(3)アレルギー問題
小麦やライ麦、大麦などに含まれるタンパク質のグルテン。これにアレルギーを持つ人がアメリカには100人に1人ほどいる。スーパーマーケットでは、商品の包装に「グルテンフリー」の表示を目にすることが多い。小麦から米へ、また米でつくられたSake(日本酒)など、米の消費拡大に期待がかかる。

3.日本食への期待

ストリートフェスティバル“Japanese Women Don’t Get Old or Fat”の著者Naomi Moriyama氏は、米、味噌、野菜、魚を中心に、健康的でありながらコンパクトに美しい日本食を、「食のiPod」と呼ぶ。Bento Box(弁当)は子供だけでなく、大人にも人気がでてきた。また日本食は世界一の長寿の人達の食べ物として関心が高い。

(1)ストリートフェスティバルでの活況
マンハッタンでは週末に各地でストリートフェスティバルが開かれる。昨年9月の日本食フェアには、博多料理レストラン「HAKATA TONTON」のヒミ*オカジマ氏の呼びかけで、九州・福岡勢が全体の半分を占めるほど出展した。当日は朝から夕方まで客足が絶えず、来訪者は10万人を超えたという。マンハッタンで人気店のTONTONのブースには、ディズニーランドの人気アトラクション並みの長蛇の列がつくられ、他の出展ブースも一日中多くの人が群がっていた。近頃フードトラックが人気だが、日本食への関心に加えて、屋外で実施することも効果を高めているようだ。

(2)Sushi、そしてRamen
カリフォルニアロールは既に一般的だが、スーパーにはSushiコーナー、一般ホテルのラウンジにもSushiバーを見かけ、街にはSushi店が着々と浸透している。玄界灘の活きの良い魚にはじまり、美味しいお米、お酒、お茶、そしてデザートにはお菓子や果物と、Sushiをテーマに様々な福岡の食を提案できるのではないか。また、ニューヨークには福岡発の人気ラーメン店「一風堂」が2008年、「秀ちゃんラーメン」が2010年に出店した。一風堂によると待ち時間は2時間に及ぶこともあり、現在2号店の出店が待たれている。特に、日本人客は全体の2割程度に過ぎないところが、現地で受け入れられている証といえよう。一方、ニューヨークのラーメン店第1号は40年近く前にさかのぼり、これだけ“Ramen”が人気を得るには長い道のりがあったことも忘れてはならない。

4.いま取り組むべきこと

フードマーケット(1)クールに、総合的に
Eatalyはイタリア食品を買うだけでなく、食事もその場で楽しめるフードマーケットである。生ハム、パスタ、ピザ、ジェラート、野菜、ワイン、お菓子など、何でも豊富な品揃えから選ぶことができるとともに、一つ一つの産地や納入者が紹介されている。東京店の5倍の広さという規模感と、ぎっしりと美しく並べられたディスプレイ、そして食事する人達の賑わい、これらが洗練されたデザインの中に収まっている。日本食を「クール・ジャパン」という切り口で訴えかけるとしたら、この手法ではないかと考えさせる店舗である。

(2)ブームを起こすこと
San-Jは三重県桑名のサンジルシ醸造の米国法人として30年以上前からバージニア州でたまり醤油を生産している。高級食品を扱うアメリカの「デパ地下」的な存在「Whole Foods」のプライベートブランドも手がける等、既にたまり醤油では全米トップのシェアを築いている。消費量を引き上げるためには醤油単品ではなく、Teriyaki、Tempuraに続く、Sushiなど新たなブームが必要だという。
(3)伝えたい人にわかりやすく
先述のストリートフェアで最も売上が大きかったのは熊本のブースである。全国版テレビ放映(ズームイン!!SUPER)の際、紹介されたことの一つは、アメリカ人にもわかりやすい表示の工夫。ちょっとしたことだが、数ある食品の中で新しい市場を得るには、その市場でどう受け止められるか、そのためにどう表現するかが大切である。

(4)ソーシャルメディアの活用
全米レストラン協会の2011年予測によれば、Facebook、Twitter、Foursquare、Yelpといったソーシャルメディア好きな人達は、コミュニティー活動が活発で、更に一般の人よりも外食頻度が高いという。そこで、8割のレストラン経営者はソーシャルメディアがより重要なツールになると考え、半数以上が2年以内にマーケティングに活用したいとしている。前々回のレポートでも紹介したが、ビジネスで、特にファンを形成したり、ブランドを構築したり、マーケティング活動においてはソーシャルメディアが有効である。また展示会などのイベントの一過性の効果を、ソーシャルメディアのネットワークを形成することで、その後も参加型のコミュニケーションを継続したり、情報を拡散することが出来る。イベントにソーシャルメディアを組み合わせることを忘れてはならない。

インターネット上の福岡情報はまだまだ少ない。とりわけ誰もが関心を持ち、インターネットで主に情報をとる食や観光について、ウェブ上のボランティアの活用など、様々なソーシャルメディアの対策をとる必要がある。