サンフランシスコ事務所 仲谷隆造 (PDF File)

1. はじめに

米国人はインターネットを利用している時間の約4分の1をソーシャルネットワークやブログに費やし(下図)、その割合は1年前よりも43%増加している。またeメールを加えた人とのコミュニケーションにかける時間は全体の約3分の1に達する。インターネット上のコミュニケーションが盛んになり、その中でソーシャルメディアが中心的役割を持ちはじめたことが確認できる。

また、今年の8月、はじめてソーシャルメディアの代表格であるFacebookが、米国人のウェブサイト滞在時間でGoogleを抜いたという調査結果も 発表された。インターネットは、Yahoo!のポータルの時代から、Googleの検索の時代、そしてFacebookのソーシャルの時代に入ったとの声が聞かれている。

ソーシャルメディアは2008年オバマ大統領の選挙活動で話題を呼んだ。米国では個人だけでなく、大企業から中小企業まで、また行政機関や大学、諸団体などの多くがそれぞれの目的に応じて利用している。ここではソーシャルメディアのビジネス利用、とりわけマーケティングにおける活用について米国の状況を取り上げたい。まだ進化の過程だが、ブランド構築の在り方や、英語情報の一層の重要性など、組織的な対応が迫られている。

2.ビジネスにおける活用法

(1)成功と失敗
白衣を着てゴーグルをかけた男性がiPhoneを惜しげも無く自社製品の台所用ミキサーにかけて粉砕する映像がYouTubeで話題となり、この会社は短期間にわずかな費用で売り上げを何倍にも伸ばしている。ビデオ自体はあまり薦められる内容ではないが、ソーシャルメディアを活用した典型的な成功例といわれている。

一方、航空会社の事故対応等で、乗客のTwitterの声に即座に対応するA社と、放置しているB社の比較などが話題にのぼる。ソーシャルメディアがブランドに及ぼすマイナスの影響は甚大なため、もはやどの組織でも対応せざるを得ない。

(2)熱心なファンを醸成すること
これまでのマスメディアを使った無作為の広告に対し、ソーシャルメディアの登場で属性情報を活用した的確な広告ができるようになった。重点は、勝ち得た顧客をどのように管理するかの方に移り始めている。既存の顧客を如何に熱心なファンに育て、自社の製品やサービスを他の人に薦めてもらい売上を伸ばせるか、あるいはクレームを放置して信頼を損ない周知され評判を落とすか。既存顧客の扱い方次第で経済的利益が大きく左右する。

(3)ソーシャルメディアとは
ソーシャルとは何か、ソーシャルメディアとは何か。この定義は容易ではないが、ソーシャルメディアは「誰もが」何かを書き映像や音を載せて「発信」することができ、「リアルタイム」に双方向の交流ができる、人間関係や組織間の関係を構築する上で便利な道具である。

(4)どのように取り組むか
かつてアップル社で「エヴァンジェリズム(伝導)・マーケティング」を確立したガイ・カワサキ氏は、現在は常にツイート量で世界の上位に位置づけるTwitter利用の第一人者である。ウェブ上の情報を簡単にツイートに仕立てるシステムを用い、欧米の時差を意識して読まれやすい時間帯を狙い、同じツイートを1日4回自動発信する。何度も同じものを送られて迷惑だという人もいるが、テレビニュースは一日に何度も同じものが流れるといい、本人は意に介さない。

ツイートのリンク先は、通常そのニュースの情報源に直接行けるように貼るものだが、彼の場合はすべて自社の情報サイト「Alltop」に誘導し、そこからあらためて情報源に行かせる。これは自社ページの広告収入を稼ぐためであり、利用者にとっての二度手間は良い情報を提供した対価として当然だと言う。ソーシャルメディアの利用方法として、目的と行動が徹底的に明確化されている。
ビジネス利用の主な目的は「ブランドの構築」といえるが、何をどう使うかは個々の具体的な目標次第であり、目標と手段は十分に見極める必要がある。常に自分やライバルのブランドを検索・分析し、いつでも顧客の声に対応し、積極的に関与・参加していく。そしてリーダーシップを発揮する。日夜たゆまぬ努力が求められるが、すぐに成果にはつながらない。腰を据えた中長期的な取り組みであり、組織、ルール、プロセスを新たに確立することが必要となってくる。

3.米国の主要なソーシャルメディア

米国のソーシャルメディアの変遷は激しいが、現在、3大サービスとして定着しているTwitter、Facebook、Linkedinをはじめ、米国におけるビジネス利用で押さえておくべきことを紹介する。

(1)Twitter
自分やライバルのブランドを検索し、顧客の声を製品やサービスの改善に反映させていく。圧倒的に多い英語の情報を活用する英語圏の企業に対し、日本の企業は水をあけられないよう要注意である。また、利害関係者をフォローし、その人のツイートに応答していくことで自分の仲間集団を形成していく。ツイート内容はビジネスに関する洞察やフォローする人のニュースに絞るべきで、ユーモアが加わると更に良い。

(2)Facebook
利用者が5億人を超えたソーシャルメディアの代表格だが、調査会社の顧客満足度調査では全米で下位5%に位置づけられ、「好きではない」との声も案外多い。Googleは検索キーワードに連動した広告だが、Facebookでは膨大な利用者の属性を把握して「何歳の、どこに住み、何を趣味とする人」などの特定層に向けた広告が出来ることが最大の強み。
(3)Linkedin
各自の履歴を開示し、サービス内で関係者や知人と「リンク」し、様々なグループに属していく。共通の知人やグループを介して面識の無い人とも人脈構築できるため、ビジネス利用では高く評価されている。日本ではまだ馴染みが薄いが、「ソーシャル」らしく氏素性を明かしてこそ得られるメリットは大きい。

(4)YouTube
冒頭の事例の通り、ヒットすれば大きな効果が得られるため、面白いものをつくることがポイント。動画はわかりやすいため、あらゆる場面で不可欠な存在になっている。

(5)Groupon
都市毎に1日1件、割安に購入できる商品やサービスを紹介。申し込みが所定の数に達しないと買えないため、買いたい人はTwitter等で積極的に宣伝活動を行うことになる。ファンを醸成することを促進し、ウェブの世界と現実の商取引をつなぎあわせていることが重要。この他にも、ゲーム感覚や位置情報を組み合わせた地域振興にも役立つ新サービスは、多数生まれている。

(6)ブログ
個別サービスのことではないが、自社ウェブサイトにブログを入れることで、閲覧者に親しみを与え、更新頻度を高めることが重視されている。情報収集する上でも、重要情報をブログに掲載する企業があり、また上質な情報を提供するブログサイトも多いため、ブログの重要性は高い。

4.当事務所の取り組み

ここで、わずかな人員の当事務所が始めた活動を紹介することで、これから取り組む場合の参考にしてもらいたい。当事務所のミッションは米国と福岡間の「情報と仲介」により、福岡の経済活動を高めることであり、やはり福岡ファンを形成し、その助けを得ていくことが最も効果的と考える。 過去から累積した貴重な名刺データという資産を活かし、まずは福岡の経済的な強みを定期的に思い出してもらうための月刊ニュースレターを開始した(下図)。内容は米国と福岡の経済活動に関するトピックスで、日英両言語で作成している。

ニュースレターは当事務所のウェブサイト(www.investfk.com)に掲載し、登録希望した人にだけeメールで案内している。また、福岡に関する各記事は、当事務所のFacebook、Linkedin、Twitterにも掲載し、読者と意見交換できるようにしている。行政としては、ファンを醸成するきっかけとなるプラットフォームを用意することが大切ではないかと考えた。大海の中の一滴のような地道な活動だが、早速Linkedinでは福岡への進出の話をお手伝いし、世界中の何人かの福岡ファンを発見した。少なからず効果はあると感じている。ソーシャルメディアの世界、中でも英語情報の世界では、福岡は未だ寂しい地域だが、今なら日本の中では先行者メリットを活かせるのではないか。

4. 最後に

日本は経済規模に対し、グローバルなネット上のトラフィック量が少なく、情報面で孤立していることは以前の当事務所のレポートで紹介された。ソーシャルメディアの台頭によって、英語圏の企業があらゆる人からの声を聞き、製品やサービスにそれらの声を反映しはじめると、情報量の多い英語圏の企業は製品やサービスの質を向上させる上で有利となる。その結果、日本語だけで対応している日本の企業は遅れを取るのではないかと危惧される。ソーシャルメディアでも日本独自のサービスが見受けられるが、ビジネス利用においては組織の大小や業種を問わず、グローバルな視点で取り組むことを薦めたい。

また、良いと思うことを見つけたら、街角で見知らぬ人にも積極的に声をかけて褒める米国人を見習いたい。Twitterのリツイート、Facebookのいいね!ボタン、Linkedinのリコメンデーションは、いずれもウェブ上で褒めるための機能で、これらが普及を促した。褒められた人は更に新しい何かをもたらしてくれる。

尚、蛇足と思われるかもしれないが、ブランド構築と英語情報という点では、福岡の英語つづりをFukuokaからHukuokaに変えることができたらと思う。一字を変えた事例としては、豊田(とよだ)氏が創業したトヨタが有名である。現在のつづりは英語圏では通じにくく、他の「福」から始まる地域との差別化をはかることができる。